大于(だいう) / 小于(しょうう)を普及させたい

greater than / less than 問題

プログラムを書いていると,greater than (e.g. a > 0) や less than (e.g. a < 0) といった概念を使って数値を処理することがしばしばあります。

ところが,これらの概念の日本語での表現には大きな混乱があります。

Less than にあてはまる語としては「未満」があります。しかし,greater than にあてはまる語が存在しないのです。

現状での定訳は「〜より大きい」となっていますが,「未満」と比べるとあまりに冗長です。平仄を合わせるには「未満」ではなく「〜より小さい」を使用するべきですが,greater than に「〜より大きい」を当てる場合であっても,less than については「未満」が使われている例がよく見られます。これではちぐはぐであり,直感的な理解を阻害します。

さらに複雑なのは,or greater / or less にあたるものとして「以上」「以下」という大変使い勝手の良い語があることです。「〜より大きい」「〜より小さい」と比較して使い勝手が良すぎるため,「以上」「以下」が greater than / less than の意味で誤用される場合も非常に多くあります(あまりに多いので誤用と言い切って良いのかさえ自信がありません)。これは致命的な問題だと言わざるを得ず,解決のためには,greater than にあてはまる使い勝手のよい語を導入する必要があるというわけです。

「未満」をそのまま反転させれば,「既超」となることでしょう。実際に一部では既に「既超」が提案されているようです。ただ,これは日常的に使う表現としては字面が強すぎ,やや浮いてしまいます(a)。「貴重」「記帳」「基調」など同音異義語が多いという問題もあります(b)。そしてなにより,完全に新しく造語されるものであるため,スラングとしての俗な雰囲気が否めず,キャズムを超えて定着させるには大変な手間がかかることでしょう(c)。

大于(だいう) / 小于(しょうう)

そこで提案したいのが「大于(だいう)」「小于(しょうう)」です。これらは中国語で greater than / less than を示す表現です。

ご覧の通り,中国において長らく日常生活の波に揉まれてきた語だけあり,漢字が非常に単純で平易です(a)。また,「少雨」くらいしか日常的な同音異義語がなく,文脈上の区別が容易です(b)。さらに,古くからの基本的な中国語であるため,権威性があり語義も探しやすく,早期の定着を期待できます(c)。

もともと日本語は借用語を柔軟に取り入れる特徴を持っています。外国で確立した語であれば,カタカナや漢語としてすぐに受け入れられるのです。例を挙げるまでもなく,この短い記事の中にも多くの借用語が含まれています。したがって,借用語として取り入れるのは新たに造語するよりも低コストで確実な選択肢です。

以上の理由から,greater than / less than の対訳としての大于(だいう) / 小于(しょうう)の使用を提案します。

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