収益化しないブログにおすすめの無料ブログサービス

2021 年 3 月現在

はじめに

ブログサービスについてウェブ検索すると,広告掲載による収益化を主な目的とするブログについてのページばかりが見つかります。

広告掲載を主な目的とするブログでは,掲載する広告や内容についての規約上の制限の緩さや SEO などが重要な条件とされており,通常のブログを作成する場合とはニーズがかなり異なります。

本稿では,表現や情報提供を目的としたブログにおすすめのサービスを紹介します。なお,ブログサービスは全てアカウントを作成し実際に試したうえで紹介しています。

無料ブログサービスには制限が多く,そもそも無料ブログサービス自体があまりおすすめできませんが,ここでは無料のものを前提とします。料金が無料であることそれ自体よりも,クレジットカードなどの決済手段を登録せずに気軽に始められるというメリットが大きいでしょう。

長期的な利用を前提とするのであれば,無料にこだわらず独自ドメインを採用することを強くおすすめします。毎年の登録料を払い続けている限り,利用しているブログサービス・ホスティングサービスにかかわらず使用を続けることができます。したがって,サービス終了などによりドメイン名を変える必要に迫られる心配がありません。

また,運営会社が管理するブログサービスではなくインストール型 WordPress など自分自身で管理するコンテンツ・マネジメント・システム (CMS) を使うことで,非常に自由度の高い運用が可能になります。SEO の面でも,検索エンジン最大手の Google は独自ドメインのサイトを優遇しています。

新規取得した独自ドメイン名は検索エンジンに嫌われており,しばらくはほとんど検索流入のアクセスがありませんが,半年ほど経つとアクセスが一気に伸び始めます。そのため,長期的な利用が念頭にあるのであれば,なるべく早く独自ドメイン名を取得したほうがよいでしょう。

なお,数あるブログサービスの中から以下の観点でピックアップしています。本稿で取り上げていないサービスは以下のいずれかに大きな問題があるか,あるいは単に存在を知らないものです。

  • 広告の量・品質(広告の量に加え,内容もブログサービス側がある程度コントロール可能ですが,収益性改善のために問題のある広告を掲載しているサービスも多いのが現状です)
  • 使いやすさ
  • 持続可能性(ブログサービスのサービス終了が相次いでいます。運営会社の財務状況が悪い,親会社がバイアウトファンドである,社内で事業が競合しているなどのケースでは近く廃止されるおそれがあります)
  • コンプライアンス
  • 透明性(規約の運用など)
  • SEO

おすすめの無料ブログサービス

WordPress.com

WordPress.com スクリーンショット

概要

WordPress Foundation の共同創設者マット・マレンウェッグ氏が経営する会社 Automattic 社が提供するサービスです。WordPress ベースであることが特長で,有料プランでは一定の WordPress プラグインを利用することもできます。以前は基本操作がインストール型 WordPress と同じであることが最大の長所でしたが,近年は独自 UI への移行を進めており,この長所は失われつつあります。

広告は PC・スマートフォンとも他のサービスと比べて少なめですが,スマートフォンではオーバーラップ(追尾型)バナー広告が表示されます。広告の内容には何かしらの基準があるようで,あまりにひどい内容のものは見かけません。

WordPress ベースであるため,有料プランへのアップグレードでオンラインショップなどにも使えることも他にはない特徴です。制限が多いものの,データをエクスポートしてインストール型 WordPress に移行できるため,移行時に手でコピーする必要がありません。かつては日本語対応が弱いのが欠点でしたが,今では完全に日本語対応しています。

アクセス解析,パフォーマンス改善やセキュリティ向上がセットになった WordPress 公式サービス Jetpack が標準機能なのもポイントです。Jetpack の一部として基本的な MarkDown にも対応しています。

最大の欠点は自由度の低さで,CSS も JS も追加できません(もっとも,文字サイズなど一般的な設定項目はカスタマイズメニューから設定可能です)。また,共用ドメイン名を使用したときに検索で上位に表示されにくい(SEO に弱い)ことにも注意が必要です。複数のドメイン名から選べる場合がありますが,必ず *.wordpress.com を選びましょう。他はドメインパワーに大きな問題があります。

長所

短所

  • 自由度が低い(CSS・JS 不可)
  • スマートフォンでオーバーラップ(追尾型)バナー広告あり
  • 検索で上位に表示されにくい(共有ドメイン名のドメインパワーが弱い)
  • 無料プランではプラグイン・指定以外のテーマは使えない[ref]プラグイン — サポート — WordPress.com[/ref]ため,インストール型 WordPress のメリットのほとんどは享受できない
  • コミュニティ機能は事実上なし

はてなブログ

Hatena Blog スクリーンショット

特徴

同じ運営元のソーシャルブックマーク「はてなブックマーク」との連携により被リンクが集まりやすく,SEO 面で圧倒的に強いのが特徴です。この特長からアフィリエイトブログで好まれていますが,アフィリエイトなしのブログでも上位に入る使い勝手です。

また容量制限が月ごとであるため,長く続けても容量の心配がありません。CSS・Javascript ともに利用可能で,カスタマイズ性も高めです。

広告は多めですが,現在のところオーバーラップ(追尾型)バナー広告はありません。アドネットワークも Yahoo! Japan で内容は比較的手入れされている部類です。

最大の欠点は,1 人 1 アカウントしか作れず,使い分けのために複数アカウントを取得するのは規約違反であることです。1 アカウントで 5 つまでのブログを作ることができ(サブアカウント機能),それぞれのサブアカウントは公開される情報では別のものとして扱われることになっていますが,少し前までメインアカウントを特定可能なバグのような仕様がありました。したがって,こっそりと書きたい場合には向きません。表示が遅いという欠点もあります。この遅さは有料版でも改善しないようです。さらに,アフィリエイトユーザがコメントやコミュニティ機能を使って無差別に「営業」をかけることが常態化しており,面倒です。普通に使うぶんにはそれほど実益がないため,はてなスター等は非表示にしておいたほうがいいかもしれません。

なお,NPO・公共図書館では,一定の条件を満たせば有料版を無料で使えます[ref]はてなブログ NPO支援プログラム 「はてなブログPro」を無料で提供! – Hatena Blog[/ref]。

長所

  • 検索で上位に表示されやすい(共用ドメイン名のドメインパワーが強い・強力なはてなブックマーク連携)
  • 自由度が高い(CSS・JS 可)
  • モダンなシステム・テーマ

短所

  • 複数アカウントを禁止する利用規約
  • 遅い
  • 広告が多め
  • アフィリエイト用のブログサービスとして人気があるため,SEO 用の営業コメント・スター(人力 spam)が多い

Blogger

Blogger スクリーンショット

概要

大容量で話題となりましたが,現在ではそれほど際立った特長ではなくなりました。Google なので基本的な情報も公開されておらず,本格的に使おうとすると苦労することになります。

しかし,無料で HTTPS での独自ドメインが関連付けが可能な唯一な選択肢という強みもあります。また,ここ数年来の他のサービスでの広告増加により相対的に広告が少ない部類になっています。

長所

  • 広告が少なめ
  • HTTPS 含め無料で独自ドメインを関連付け可能
  • 自由度が高い(CSS・JS 可)

短所

  • Google のサービスなのでサポートは一切提供されない
  • 有料プランがない=アップグレードパスを欠く
  • 日本ではあまり使われていない
  • コミュニティ機能なし

Goo blog

概要

3 GB[ref]goo blog 機能比較表[/ref]
独自ドメイン不可
有料プラン月額 210 円~[ref]goo blog 機能比較表[/ref]

2019 年にリニューアルされるなど,今後の継続に前向きな姿勢を見せている数少ないブログサービスの一つです。初心者向けの機能が充実していることが特徴です。また,広告の内容は控えめな部類です。

一方,広告の量自体は多い部類となります。自由度も高くはなく,UA で振り分けるためレスポンシブ非対応です。

長所

  • 一部テーマに限り CSS 編集可能
  • 初心者向けの機能やマニュアルが充実している

短所

  • 広告が多い
  • Javascript 不可


用途によっては選択肢になるサービス

  • 楽天ブログ: アフィリエイトが推奨されているためはてなブログに似た問題があり,容量や自由度も低い水準です。しかし,上掲のサービスがいずれも利用できない場合にはよい選択肢になりえます。
  • アメーバブログ: 目立った特徴はありませんが,今もある程度積極的にアップデートされている数少ないサービスのひとつです。若年層の利用が比較的多いのが特徴です。なお,容量は 1TB ということになっていますが,アップロードできるのは JPG, PNG, GIFのみであり 1 ファイルあたりの容量は 3MB となっているため実益はあまりありません。
  • 忍者ブログ: SEO 上の問題があり,ある程度続けても検索流入はまったく期待できません。障害の多さや容量の少なさ(500MB),HTTPS への対応が不完全であるといった問題もあります。一方で自由度の高さが魅力であり,ZIP を含むさまざまな形式のファイルをアップロードしたり,スクリプトを設置したりすることができます。一時的でかつ容量を必要としない用途には向きます。
  • ウェブリブログ: 住所・氏名・生年月日・性別の登録が必須です。サービス自体に目立った長所はありません。
  • LINE ブログ: LINE アカウント必須です。おそらく SEO 上の問題があります。
  • ココログ: 20 年 9 月 1 日から,1 年間記事の追加がないとアカウントがロックされる(解除には有料登録が必要)ようになりました。

その他無料サービス

Tumblr

tumblr スクリーンショット

システムとしてはブログというよりも SNS に近いですが,Tumblr では無料で容量無制限・独自ドメインでの運用が可能であり,ブログとして使っている人もいます(なお Tumblr 自身は「ブログ」サービスであると自己定義しています)。

Facebook・Instagram では文章は長い文章は極力隠されて読まれないのに対し,Tumblr では文章主体の投稿でも問題ありません。もっとも,検討に値するのはやはり写真を主体とした投稿が多い場合でしょう。

フラットファイル CMS (flat file CMS)

Grav スクリーンショット

関係データベースを使わず CMS の機能を実現する「フラットファイルCMS (flat file CMS)」呼ばれるジャンルがあります。PHP は必要となりますが,関係データベースが提供されていない無料のレンタルサーバでも利用できます。一方で,カスタマイズやユーザ管理の制約が大きく,サイトのコンテンツが増えたり複雑なことをしたりすることでパフォーマンスが落ちるおそれがあります。

GravPico などの採用例が多いようです。

静的サイトジェネレータ (static site generator)

Hugo スクリーンショット

近年,サーバサイドのプログラムで静的コンテンツを生成する「静的サイトジェネレータ (static site generator)」が流行しています。セプトになる傾向があります。WordPress のような CMS の直接の代替を意図してないため,PHP 以外で書かれたものがあるのも特徴的かも知れません(この場合,ホスティング方法は考える必要があります)。制約が多いため汎用的に使えるものではなく,現在のところまだ実用というよりは実験的なものですが,静的コンテンツベースなので表示時に低負荷でセキュリティも堅牢であるため,用途によっては検討に値します。

静的サイトジェネレータによるページには,Go 製で高速な Hugo と組み合わせて Github pages(無料で1GB・独自ドメイン可)をブログとして使っている例が多いようですが,他にもさまざまなプロジェクトが林立し,活発に開発が進められている状況です。

HTML エディタ + オンラインストレージ

「ブログ」からはかなりかけ離れますが,BlueGriffonSeamonkey Composerのような古典的な HTML エディタを Dropbox や Sync.com,pCloud などのオンラインストレージで同期して使うことで,完全にローカルでの管理でありながら,ブログのようにさまざまな環境から更新することもできます。

利便性はかなり低く管理も非常に面倒ですが,サーバサイドでは PHP さえ使わないためセキュリティは非常に高く,枯れたソフトのため専門的な知識も必要ありません。

有料サービス

Star Domain + WordPress

StarDomain スクリーンショット

有料ですが,私がよく使う方法にも触れておきます。よくある最後に広告に誘導するやつとかではないので安心してください(?)

Star Domain でドメイン名を取得・更新すると,オマケとして 3 GB で PHP / MySQL の使える広告・使途制限なしのレンタルサーバが無料で付いてきます。文字情報が保存されるデータベースは 100 MB でひとつのみですが,あまり凝った使い方をしなければさしあたり問題ありません(だいたいの目安として,5000 文字程度で 200 記事程度)。Let’s Encrypt による TLS 化とその自動更新にも対応しています。

その分ドメイン価格に上乗せされているというわけでもなく,国内の ICANN 公認レジストラの中ではかなり安い部類です。月当たり 100 円ちょっとで独自ドメイン + 完全なオンプレ WordPress が使えるというは非常に安いと言えます。なお Star Domain でのドメイン取得なしでも無料で WordPress を使えるプランもありますが,機能が大きく劣る上に広告が表示されますので,それなら Star Domain に移管したほうがマシです。

パフォーマンスは高くもありませんが低くもなく,少なくともよくある無料ブログサービスとは雲泥の差です。プラグインで AMP 対応もできます。有料プランも安い部類で,需要に応じて簡単に切り替えられます(なお逆に有料プランから無料プランに切り替えることはできないので要注意)。

欠点はもちろん,自分で管理する必要があることです。とはいえ,WordPress の簡単インストール機能を利用でき,いまのインストール型 WordPress はプラグインやテーマも含めて自動アップデート機能に対応しているので,手間は無料サービスを利用するのとそれほど大きくは変わりません。

結論

団体のサイトや,個人でもデザイン上の自由度を重視しない場合には WordPress.com をお勧めします。広告が少なめで,充実したアップグレードパスも用意されています。あとでインストール型 WordPress に移行するのも比較的簡単です。

高いカスタマイズ性を求める場合や,NPO・公共図書館の料金免除条件に該当する場合は,はてなブログがおすすめです。広告は多めですが,今のところ追尾型バナーは採用されていないためそれほど目障りではありません。

Blogger や Goo ブログも独自の特長を持つます。

楽天ブログ,忍者ブログ,ウェブリブログ,LINE ブログ,ココログといったサービスも,用途によっては検討に値するかもしれません。

もっとも,長く続けるつもりであれば,最初から独自ドメイン名でインストール型 WordPress のサイトを構築したほうが,後から楽です。

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