Logi Bolt
Logi Bolt 登場
ニュースを確認していたら,Logicool (Logitech) が Logi Bolt なる新しい通信方式を導入するとの報が目に入りました。これは Bluetooth LE の標準に基づくもので,Unifying を置き換える形で導入されるとのことです。Logi Bolt には,Unifying との互換性はありません。
まだ実機が出ていないのでわからない部分もありますが,以下に情報をメモしておきます。
Logi Bolt の基本
特記なき限り公式リーフレット Logi Bolt eBook が出典です。
規格
Bolt は技術上その基本部分において Bluetooth LE に基づくものですが,ペアリング等に独自の方式を用いるプロプライエタリのプロトコルのようです。つまり,BLE の所定の規格を満たしていても他社のデバイスは接続できないとみられます。
Bolt ドングルを使用する場合,BLE 5.0 に基づき,LE Security Mode 1 / Security Level 4 で通信されます。これはマウス・キーボードを問いません。マウスで通信内容が暗号化されるのは素晴らしいことです。Bolt ドングルと PC の通信は USB HID により,Unifying と同様です。
通常の Bluetooth アダプタに接続する場合,BLE 4.0 以上に対応し,キーボードでは LE Security Mode 1 / Security Level 3,マウスでは LE Security Mode 1 / Security Level 2 で通信されます。ただし,互換性のため,システムが対応していない場合はよりセキュリティ水準の低い方式での接続も許可されるようです。
MX5500 ドングルの再来……ではない
FAQ では Bluetooth 接続が禁止されているシステムでも利用できることが明記されています。ということは,認証情報はドングルに保存されるはずです。
その昔 MX5500 ドングルという伝説の Bluetooth ドングルがありました。これは Logicool MX5500 というキーボードの付属品であり,認証情報がドングルに保存されることで,OS で Bluetooth のセットアップがされていなくてもプラグアンドプレイの USB HID として Bluetooth デバイスを利用できるという代物です。
何が嬉しいのかというと,BIOS 画面や OS 起動前の環境(LUKS のパスコード入力など),組込み機器等でも多種多様な Bluetooth キーボードを利用できるのです。
すわ Bolt はその再来かと思ったのですが,先にも触れた通り,残念ながらそう甘くはありませんでした。
Bolt ドングルで USB HID として利用できるデバイスは Bolt 対応デバイスに限られます。もっとも,今後発表される Logicool の Bluetooth 製品については,Bolt にも対応するようになる可能性はあると思われます。
Logi Bolt のメリット・デメリット
メリット
- 従来の Bluetooth 接続および Unifying 接続より安全。
- 公開の規格である Bluetooth LE に準拠して設計されているため,一般に完全に独自の方式より安全だと考えられる(secure by design)。
- Bolt デバイスを通常の Bluetooth LE デバイスとして Bolt ドングル以外に接続することも可能。
- Unifying と同様,ファームウェアアップデートが提供される(セキュリティアップデートにつきファームウェアロールバックを禁止するとの表記あり)。
- 他社の独自方式採用製品以上の低遅延・高ノイズ耐性が主張されている。
デメリット
- プロプライエタリ規格である。
- Bolt ドングルに通常の Bluetooth LE デバイスを接続することはできない。
- Unifying との互換性はない。
- Bolt デバイスの接続は最大 6 台まで(通常は問題にならない)。
その他気になったこと
- 実際の遅延はどうなんだろう? コントローラの性能向上で補っている場合,消費電力や発熱,コストへの影響は?
- ノイズ耐性・遅延抑制は主に電波強度の強化に依っているようにも読めるけど,他のデバイスへの干渉はどうなんだろう?
- ドングルの耐タンパ性はどうなっているんだろう?
まとめ
Logi Bolt は Unifying の正常進化形であり,早くからセキュリティを重視してきた Logicool らしい納得の仕様です。一方で Bluetooth のエコシステムからは隔離された独自方式であり,利便性に限界のある,いわば過渡期的な存在であると言えます。
願わくはこの機能性が普通の Bluetooth LE 接続として PC の内蔵アダプタで利用できる時代になってほしいものですが,まあ当分は難しいでしょう。
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